U首アンダーシャツ
僕が入学した◯浜高校には、たくさんの伝統がありました。
中学生の時は、甲子園に憧れ、たくさんの高校野球雑誌を読み漁っていた僕は、なぜ◯浜高校のメンバーに入る下級生はみんなハイネックのアンダーシャツを着ないのかと疑問に思っていました。
僕は、体型も太めでハイネックを着ることで多少痩せて見せることができる最強のパートナーとして中学時代からハイネックに頼りっぱなしの生活をしておりました。
しかし、高校入学前のユニフォームの採寸を行う日に衝撃的な事実を目の当たりにしました。
メーカーの方から
「1年生は、ハイネックを着ることはできません。残念、U首のアンダーシャツを注文して下さい」
は!!!!!!な、な、な、なんと。。。だっさ!!!U首て!
ハイネックに頼りっぱなしだった僕は、ショックで硬直状態になり、これから先の◯浜高校での自分のユニフォーム姿の見せ方、自分のブランディングがハイネックなしでは考えることができない現実に言葉を失い、失神しかけました。
ハイネックを着れない少し太めの野球選手なんて、誰が見たいんだ。
いっそ野球はやめたほうがいいかも知れない。
首だけでいい、体は少しだらしないかも知れないけど、首だけはお願いですのでピシッとさせて下さいと心の中で大音量で叫びました。
まさに
「馬を得て鞭を失う」とはこの事かと身をもって感じた瞬間でした。
【意味】馬を得て鞭を失うとは、一方を得た代わりに、一方を失うこと。また、目的のものは得たが、それを活用する手段がなくなることのたとえ。
(参照:故事ことわざ辞典http://kotowaza-allguide.com/u/umawoetemuchiwoushinau.html)
僕は、野球を頑張って◯浜高校の野球部というブランドを得た。
その代わりに格好をつける一番の武器であったハイネックという手段を奪われてしまった。
しかし、僕は◯浜高校に格好をつけに来たわけではない。
そんなことも我慢できなければ、この高校でやっていく資格はないと自分に言い聞かせ、でも、もしかしたらハイネックが着れるチャンスはあるかも知れないとも思いながら少なめの枚数を注文した。
高校に入学し、半年が経った頃、秋の大会のメンバーが発表され、なんとかメンバーに入ることができた。
なんと、メンバーに入った下級生は公式戦だけハイネックを着ることができるのだ!
メンバーに入った嬉しさよりも僕を支えてくれたハイネックにまた袖を通せる嬉しさに、グランドで美酒ならぬキンキンに冷えた水を一気飲みしたことは今でも忘れない記憶となっている。
試合の一週間前、新しいハイネックのアンダーシャツをスポーツ用品店に買いに行き、すぐに着れるよう部屋にハンガーでかけて飾っておいた。
そして試合前日、僕のことを奴隷のようにいじめてくる同じファーストを守っていた先輩江◯さんに練習後笑顔で言われたことを今でも忘れない。
江◯さん「明日の試合なんだけどさ、お前はハイネック禁止な、着て来たら知らねーからな」
山本「え?なんでですか?」
江◯さん「理由なんかねーよ、ハイネックを着て来ないのはお前だけだからみんなに見えるようにバットボーイをやれ」
(参照:フィンランドのしょんべん小僧)
え?理由なし?はああああああああああ!!!!!!!!!意味がわかんない!
思春期の高校生が頑張って耐えて、やっと人前でハイネックを着れるこの一世一代のお披露目会を。この人は一瞬にしてかっさらっていきやがった。
どんな嫌なことをされるよりもはるかに度を超えた最上級のいじめである。
そして試合当日、僕は一人ハイネックを着ることができず、U首でバットボーイをやりました。
いつかこの人を地面に寝かせて、口の上にボールを乗せてゴルフでもやってやると心に誓い、我慢してボールボーイをやりました。
そして、この数年は続いているであろう伝統もある日に終わりを迎えることとなりました。
僕らが上級生となった時、練習中に監督さん、部長さんを囲んでのミーティングをしている時でした。
部長さん「おい!!なんでお前ら、下級生だけハイネックを着てないんだ!いじめられてるのか!明日からそんな決まりなくせ!!」
え。。。。。なぜ今。。。
なぜ今までの数年気づかなかったのだろうか。
なぜ、俺が大会期間中、一人でU首を着ていた時に気づいてくれなかったのに今気づいたのだろうか。
意味がわからなすぎてパニックに陥りそうでした。
そんなこんなで下級生もハイネックを着るようになりました。
僕みたいな思いをする選手が減ってよかった。
結論、ハイネックを着てなくてもかっこいい選手はかっこいい。
もっと自分を磨いてハイネックを着なくても自分が輝けばいいんだと身をもって感じました。
ちなみにめちゃくちゃにいじめられた江◯さんとは、今ではすごく仲良しでいまだに可愛がってくれる大好きな先輩へとシフトチェンジしました。
めでたしめでたし。
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